今さら「デフレの正体」を読んでみた結果・・・

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藻谷浩介著「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」を今さら読んでみました。「経済って何だかムズカシソウ」「脳みそから湯気出そう」と苦手意識があり、敬遠しておりましたが、いざ読み始めてみると面白くて最後まで一気に読んでしまいました。印象的だったところを元受験生よろしくまとめてみました。



1.バブル崩壊後に日本の輸出は倍増している



日本の貿易黒字は2001年に8兆円だったのが、資源高がピークに達した2007年には12兆円ですから、今世紀頭の七年間に5割も増えたのです。


不況不況と騒いでいたように思いますが、実はちゃっかり儲けていたんですね。但し、2008年以降はリーマン・ショックのあおりもあって、減少に転じています。しかも、ここ数年は赤字が続いているとのこと。しかし!ここで注目すべきは2001年から2007年の間に貿易黒字が5割も増えた=それだけのお金が国内に流れ込んだにも係らず、国内の消費はそれほど伸びていなかったということです。


2.儲けたお金はどこへ消えた?


首都圏で起きているのは「現役世代の減少」と「高齢者の激増」の同時進行です。そこでは、企業に蓄えられた利益が人件費増加には向かわない。現役世代現象に伴い従業員の総数が減少しているので(もう少しわかりやすく言えば定年退職車の数が新卒採用の若者の数を上回るので)少々のベースアップでは企業の人件費総額は増えません。となれば、企業収益から個人所得への直接の所得移転のチャンネルは、配当などの金融所得しかありません。事実、企業に多額の投資をできる富裕層は大きな利益を得たわけです。が、不幸にして?その多くは高齢者だった。彼らは特に買いたいもの、買わなければならないものがない。逆に「何歳まで生きるかわからない、その間にどのような病気や身体障害に見舞われるかわからない」というリスクに備えて、「金融資産を保全しておかなければならない」というウォンツだけは甚大にある。実際、彼ら高齢者の貯蓄の多くはマクロ経済学上の貯蓄とは言えない。「将来の医療福祉関連支出の先買い」、すなわちコールオプションの購入なのです。先買い支出ですから、通常の貯金と違って流動性は0%、もうほかの消費には回りません。これが個人所得とモノ消費が切断された理由です。


貿易収支黒字 = 輸出企業好調 = 輸出企業利益増 = 配当金増というお金の流れで、庶民にはお金が流れてこない。しかも、流れていった先がお金を使わない高齢者ということで経済が停滞している。不謹慎ですが、オレオレ詐欺の連中はいいところに目をつけましたねw



3.じゃあ、どうすればいいの?


(1)高齢富裕層から若者への所得移転を


現在進行しつつある団塊の世代の退職によって結構な額が浮いてくる人件費を、なるべく足元の益出しに回さずに(利益は出せば出すほど配当などの形で、あなたの商品を買いもしない高齢富裕層に還元されてしまいます)、若い世代の人件費や福利厚生費の増額に回すということです。席ほど一部上場製造業の決算の合計の数字をお見せしましたが、96-06年度の10年間に従業員数が二割減り、少々のベースアップはありますが人件費総額も14%減っている。これを減らさない、とはいかない場合でも何とか数%の減少抑えるように努力することが、自助努力の方向なのです。

みんなすぐに思いつくやり方ですね。もってる人から奪うという、ベーシックなソリューションです。奪うというと語弊がありますが、著者は孫世代への相続なども効果があるのではないかと主張しています。何故、自分の子供ではなく、孫世代なのかというと相続を受ける人の平均年齢が67歳とこちらも高齢化しているため。高齢者から高齢者へお金が渡っても意味ないですもんね・・・。


(2)女性の就労と経営参加を当たり前に


ところで今退職年代に入りつつある団塊世代のうち、優勝労働をしていたのは500万人余りです。ということは、生産年齢人口の専業主婦1200万人のうちの4割方が、(正社員であればもちろんいいのですが臨時採用でも派遣でもパートでもいいので)とにかく1週間に1時間以上お金をもらって働いてくだされば、団塊の世代の退職が雇用減・所得減という形で日本経済に与えるマイナスインパクトは、なかったことになってしまうのです。


日本経済のためにも、僕も嫁には頑張って働いて頂こうと思っています。
嫁よ、ともに頑張ろうじゃないか!


(3)労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受け入れを


最後に第三の策としてお話するのが、訪日外国人観光客・短期定住客の増加です。「外国人労働者」の導入ではなく、「外国人観光客の増加」。これは、日本経済のボトルネック=生産年齢人口の減少が、経済学が想定するような労働力の減少ではなくて消費者の減少、生産力の減少ではなくて内需の減退という問題を生んでいる、という現実の観察から当ぜんに導き出せる戦略です。生産者ではなく消費者を外国から呼んでこようということです。


最近話題の中国人観光客による「爆買い」はありがたいことですが、ドラッグストアや家電量販店に行くと見慣れない言語のアナウンスや案内が貼りだされていて、正直「なんだかなぁ」とも思います。


ん?「外国人労働者」じゃ、いかんの?


今後五年間に六十五歳を越えていく団塊前後の世代だけでも一千万人以上います。これに対して、日本在住の外国人は不法在留者を足しても二百三十万人、団塊前後の世代の二割程度しかいません。<中略>ちなみに過去十年間の増加は留学生を含め六十万人、毎年の増加は六万人というペースです。


俺「いや、全然足りひんやん」



まとめ


賛否両論あるこの一冊。私自身が偏らないためにも、真っ向対立している(らしい)、吉川洋著「デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する」を次は読んでみようと思っています。

ただ、各所で言われている「少子高齢化が進んでいるにも係らず、デフレになっていない国もある!」という批判は的外れだと思います。人口構成を調べてみましたら、例にあげられるロシア、香港、シンガポールなどは生産年齢人口が日本よりも10%ほど多かった。著者は生産年齢人口=消費性向の強い消費者の減少を原因と言っていますよ?反対派の方々はちゃんと読んだのでしょうか。ドイツに関しましては人口構成は日本とほぼ同じでした。しかし、日本と違って個人所得と消費額に相関がありました(※1)。消費者にしっかりお金が回っているということでしょう。著者に対して「嘘つき!」とか罵るのなら自分がまずはデータに当たることが大事なのでは?著者もかなり挑発的な口調で書いてらっしゃるので自業自得なところはありますがw

もしかして・・・アンチの連中って、お金持ちの高齢者の方々なんじゃない?



※1 参考:ドイツ経済の頑健性とリスク - 三井住友信託銀行(PDF)



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